<診療報酬改定>重症向け病床削減 厚労省骨子案
厚生労働省は8日、2014年度の診療報酬改定基本方針の骨子案を厚労相の諮問機関、社会保障審議会の関係部会に示した。費用がかさむ重症患者向けの入院病床削減を意図した病床機能の再編が中心だ。しかし、病院団体や日本医師会(日医)は強く反発し、修正を迫っている。
診療報酬改定は、おおむね2年に1度。同日厚労省が示した骨子案には、がんや精神疾患、認知症対策の重視に加え、「入院・外来医療機関の機能分化」が盛り込まれた。病院と診療所などの役割分担を明確にし、入院不要の人を在宅医療に誘導する思惑がある。
「機能分化」の焦点は、「7対1病床」の絞り込みだ。7対1とは「入院患者7人に看護師1人」。看護師の配置基準が最も手厚い病院を指す。本来は重症の救急患者向けで、報酬も最高に設定されている。
ところが高報酬を求めてさまざまな病院が「7対1」に転じたため、06年には4万4831床だった7対1病床は12年には35万7569床に急増した。軽症患者を多く入院させている病院もあり、医療費を押し上げる一因となっている。このため厚労省は「重症患者割合」の算定方法を厳格化するなどし、基準以下なら報酬を減額する意向だ。
だが、過去の病床再編案は方針が二転三転してきた。病院団体や日医は厚労省の姿勢に「高単価の病床削減ありき」と反発している。一連の病床規制に対し、日医の中川俊男副会長は1日の中央社会保険医療協議会で「差別感が強く最悪の提案だ。根本的に見直してもらいたい」とかみついた。
一方で、医師らの収入に直結する診療報酬の改定率の攻防も過熱してきた。8日には約270人の自民党衆参議員が名を連ねる「国民医療を守る議員の会」(会長・高村正彦元外相)が発足し、増額を求める日医の横倉義武会長も出席した。設立趣意書には「適切な社会保障財源を確保」と明記し、発起人の1人、鴨下一郎前国対委員長は記者団に「大筋の方向性についてはものを言わせていただく」と宣言した。
とはいえ、税負担を伴う診療報酬の増額は財政を圧迫する。麻生太郎財務相は8日の記者会見で「消費税が上がったから自動的に診療報酬を1%上げるような簡単な図式ではない」とけん制した。
◆14年度診療報酬改定基本方針の骨子案
・入院・外来医療機関の機能分化
・診療所や中小病院で働き、患者の診療全般で中心となる「主治医」を評価
・在宅で受けられる医療を推進
・がんや精神疾患に関する医療を推進
・認知症対策を推進
・救急、小児、周産期医療の推進
・明細書の無料発行を推進
・入院日数を短縮
・後発医薬品の使用促進
・画期的な新薬開発に向けた支援