糖尿病性腎症、仕組み解明…早期診断に道

糖尿病で腎臓の機能が低下する糖尿病性腎症の新しい発症メカニズムを、慶応大学の伊藤裕教授(腎臓内分泌代謝内科)らのグループが解明したと発表した。

病気の早期診断や発症予防に役立つと期待される。医学誌「ネイチャーメディシン」に21日、発表した。

糖尿病の患者数は推計1000万人で、人工透析の最大の原因になっている。腎臓で血液を濾過(ろか)する糸球体という部分が傷つき、尿に微量のたんぱく質が漏れ出すのが、糖尿病性腎症の第1段階と考えられていた。

研究グループはマウスの実験で、糖尿病になると糸球体が傷つく前に、尿を作る尿細管から糸球体に放出される「ニコチン酸モノヌクレオチド(NMN)」という物質の量が減ることを発見した。サーチュインという遺伝子の働きが、糖尿病で悪くなることが原因で、遺伝子改変で、糖尿病のマウスのサーチュインの働きを高めると、糖尿病性腎症の発症を防げた。この遺伝子は、運動やカロリー制限で活性化し、活性化すると寿命延長効果があるとされている。