飛び込み出産、最多307件…大阪府で昨年
大阪府は9日、府内で昨年、妊婦健診をほとんど受けずに出産する「未受診妊婦」が307人に上り、前年比1・2倍に増加したと発表した。2009年に調査を始めて以来、最多。
貧困や望まない妊娠などが背景にあることが多いため、児童虐待につながる恐れが指摘されており、府は受診を呼びかけるとともに今年度、未受診妊婦の支援を強化する。
未受診妊婦は「飛び込み出産」などとして問題になったため、大阪産婦人科医会が毎年、調査を実施。分娩(ぶんべん)を扱う府内の約150施設を対象に、受診回数が3回以下か、最後の受診から3か月以上で出産したケースを調べた。
09、10年はともに150人前後だったが11年に254人に急増した。今回は300人を突破、府内の年間分娩数は約7万5000件で、妊婦250人に1人の割合に当たる。年齢は13~46歳と幅広く、未成年は19%。ほとんどが無職か非正規雇用で、住所不明も161人と半数を超え、生活環境の不安定さが浮き彫りになった。
未受診の理由には、経済的問題や望まない妊娠、未婚などが挙げられ、厚生労働省の専門委員会が指摘する、児童虐待の背景と重なる部分が多いことも確認。調査を担当した光田信明・府立母子保健総合医療センター産科主任部長は「増加理由はわからないが、社会問題として考えなければいけない。育児ができる環境にないために虐待につながるリスクは高く、妊娠期からの支援が重要」と話す。
こうした問題を受け、府は今年度、虐待予防として対策を強化。未受診妊婦の相談に乗れるよう、助産師向けの研修を行ったり、同医会と連携し、公的支援サービスなどを記したガイドブックを作成したりする。府健康づくり課は「妊婦を孤立させない仕組みを作りたい」としている。